常総市長への被災者支援策に関する提案

 以下の提案を、常総市水害対応NPO連絡会議(呼びかけ人:横田 能洋)から常総市長宛に提出しました。
 同会議では、水害被災者支援活動のために全国から集まった民間の団体が毎晩情報交換を行っており、これまで63団体が参加しています。同会議の機能の一部として、常総市内での炊き出しやイベント開催などの希望を調整しています
常総市長への被災者支援策に関する提案(PDF:296KB)のダウンロードはこちらをクリック!

2015年10月10日

常総市長 高杉 徹 殿

常総市水害対応NPO連絡会議
呼びかけ人 横田 能洋

常総市における被災者支援策に関する提案について


 平成27年9月関東・東北豪雨の被災者支援活動に関しましては、私たちNPOにとって、常総市職員のみなさまの不眠不休なるご公務に関し、頼もしく、連帯感を感じております。被災されている職員もいる中でのご対応、心労をお察しいたします。
 常総市で支援活動するNPOのネットワークである「常総市水害対応NPO連絡会議」(呼びかけ人:茨城NPOセンター・コモンズ 代表理事 横田 能洋、10/8現在、63団体が参加)では、県内外のNPOによる日々の活動に関する情報共有の場を、発災直後から活動を終えた夜に毎日開催しております。その中で、過去の災害の事例等を鑑み、現在の常総市の状況について、懸念いたすところです。
 つきましては、被災された方が希望を持って復興に向けて歩めるよう、ぜひ以下の事項を官民一体となって実現していきたく、ここに提案いたします。
1. 被災者間格差を生まない対応
(1)半壊認定世帯への財政的支援格差への対応
 ・ 被災者生活再建支援法の対象から外れる世帯が約75%
 ・ 市、県の災害見舞金制度への上乗せまたは別制度の創設(設定)の必要性
(2)在宅避難者への食事・物資支援等への対応
 ・ 10/5より食事と物資の支給停止による疎外感と生活困窮
2. 最低限の健康の確保に対する対応策
(1)避難所の環境についての対応
 ・ 要配慮者が安心して過ごせる空間づくりの必要性が高い
(2)提供される食事の栄養価への対応
 ・ 発災後3週間以上しても、おにぎりとパンと変わっていない
(3)通院・通所・通学等への対応
 ・ 避難所の統合や車水没による移動手段の確保が課題
3. 人口流出を避けるための対応策
(1)民間賃貸住宅(みなし仮設)の有効活用
 ・ これまでの生活エリアに近い環境の確保の必要性が高い
(2)被災を機に移動困難となった方への対応
 ・ 移動支援のためのインフラ整備(カーシェア、移送サービスなど)を確立
(3)常総市に暮らすことを誇りに思える官民協働による対応
 ・ 市民サービスを向上のため、互いの得手不得手を補完し合う

【別添資料】※現状と対応策の提案

1. 被災者間格差を生まない対応
(1)半壊認定世帯への財政的支援格差への対応
★現状と課題★

  • 被災者生活再建支援法の適用が決まったことにより、全壊や大規模半壊と半壊の世帯に対する財政的支援策に大きく差が生じる。全壊50、大規模半壊914、半壊2,773(10月7日16時現在、県発表)という被害がある中、全壊および大規模半壊家屋に支給される額(100~300万円)と比べると、半壊(床上浸水1m未満)世帯への国の支援制度に格差が生じ、同じ地域でも制度救済の有無による差が生じることで地域コミュニティへの影響が出始めている。

★提案★

  • 国の制度でみることができない半壊世帯への県費および市費による何らかの救済制度を創設し、被災者の格差是正に取り組む。また、市民からの相談受付窓口を一元化し、たらい回しにならない工夫を講じる。

(2)在宅避難者への食事・物資支援等への対応
★現状と課題★

  • 避難所の避難者数は発災直後より減少を続けており、10/7現在、市内外の避難者は450人を下回っている。一方、在宅避難者においては10/5より食事や物資が支給停止となり、自宅の水回りなど生活の基本となる炊事等の設備が復旧しない中、食事を作れず、コンビニやスーパーなどでの惣菜や弁当のみの生活となっている。
  • 民間による炊き出しの多くは避難所に集中することもあり、そもそも在宅避難者への生活支援は行き届きにくい。物資も同様に、避難所内の環境も整わない(未だに布団なしで寝ている人が多い)中、在宅避難者への物資支援は行き届く状況にないにも関わらず、生活支援物資等の配布が終了したことで、在宅避難者の生活困窮は危機的状況にある。
  • 車を流された家庭、高齢単身世帯などはこれまでも物資配布をしていた水海道体育館などに来ることすらもできず、一度も物資をもらえていない住民もいる。(住民の声より)
  • 在宅避難者の中には、本来避難所で生活する方がよい方も、「家から離れていて片付けが進まないから」「ペットが連れ込めないから」「風邪をひいて周りに迷惑かけられないから」「朝早く(AM3:00頃)仕事にでないとならず、大勢の避難所では迷惑をかけてしまうから」「病院から離れてしまうから」等々、様々な理由からやむを得ず在宅での避難を選択されている方が多くいる。

★提案★
食事について

  • 自炊ができない状況と世帯数を地区ごとに把握し、一日一食だけでも弁当の配食ができるようにする。具体的には、地区ごとに区長さんなどの協力を得て必要食数を把握し、地区に1-2か所の配食ステーションを設け、住民自治による配食を行う。
  • 同時に、住宅の復旧状況を把握し、炊事場を含む水回りの復旧状況が戻った際には配食を終了する。近隣のスーパーなどが営業再開してきていることから、炊事用具(カセットコンロ、鍋等)の支給により、食事そのものの提供より炊事機材を提供し、自立を促進する支援を行う。
  • 地域によっては、食材を定期的に渡すことで地域住民が一体となって炊き出しを行うなど、地域共助を促進しながら食環境の改善行う。

物資について

  • 布団、洗濯機(地区で数台など)等の支給または配置を行い、共益の料金については、避難所設置の費用(災害救助法の避難所設置320円/日)を充てて対応する。
  • その他、必要な物資(消耗品含む)を企業等に呼びかけ、配布にはNPOやボランティアの協力も得ながら、住民の声を聞きながら進めることで、生活基盤の復旧状況を確認することもできる。

2. 最低限の健康の確保に対する対応策
(1)避難所の環境についての対応

  • 要配慮者が安心して過ごせる空間づくりとして、住環境の改善が急務。
  • 避難所では未だに布団もなく、朝晩は10℃近くまで冷え込む時期になってきたこともあり、特に配慮を要する高齢者には厳しい環境となってきており、すでに「寒くて眠れない」という声も上がっている。
  • 過去の災害で設置されている福祉避難所も未だ設置されていないことから、要配慮者への体制が不十分な状況が発災当初から続いている。
  • 保健師や看護師などの医療関係者の常駐の確保が困難であり、配置される方も日替わりとなることも多く、継続的な経過観察をする状況にない。

★提案★

  • 一人一セットの布団の支給(リースも可)のため、必要数の把握と配布
  • 要配慮者への対応を手厚くするための部屋割りの実施
  • 医療関係者の配置の提案(行政職員応援要請などでも対応可能か)

いずれも災害救助法の範囲内で実施可能なものを具体的に把握し、県に相談する。
(2)提供される食事の栄養価への対応
★現状と課題★

  • 発災後3週間以上しても、おにぎりとパンが続いている
  • おにぎりでは硬くて食べられない(食べづらい)方がいる
  • 炊き出しはあるものの、民間主導であり、頻度も避難所により偏りがある

★提案★

  • 炊き出しの希望について、すでに実施している「支援申し出窓口」を活用し、民間による炊き出し会場の偏りを調整する
  • おにぎりやパンから弁当にするための様々な工夫について検討し、必要に応じて住民に呼びかけて協力を得るなど、自立及び地域のコミュニティ形成を後押しできるような状況をつくる

(3)通院・通所・通学等への対応
★現状と課題★

  • 避難所の統合による移動手段の確保が困難
  • 車水没による移動手段の確保が困難
  • 上記事情により、通院・通所・通学に加え、通勤・買物等に支障が出ている

★提案★

  • 全国移送サービスネットワークとの連携による移送の実施(すでに開始済)
  • カーシェアリングをサポートする民間組織との連携
  • 移送サービスおよびカーシェアリングについて、開始当初は既存の外部組織の協力を得ながら開始し、地元移行を目指しながら展開する

3. 人口流出を避けるための対応策
(1)民間賃貸住宅(みなし仮設)の有効活用
★現状と課題★

  • 県では現状、仮設住宅の建設はせず、公営住宅の空き部屋の活用と民間賃貸住宅の活用(みなし仮設)での対応となっている
  • 公営住宅は常総市内にはなく、実質常総市での生活ではなくなる
  • みなし仮設住宅の供給も予定されているようだが、公表されていない
  • 上記状況となると、特に被災時に賃貸住宅にお住まいであった方が常総市に戻って生活する可能性が下がり、結果人口流出につながりかねない

★提案★

  • これまでの生活エリアに近い環境の確保のため、常総市内の不動産関係者等に空き物件情報の提供を依頼する
  • みなし仮設への入居手続きを促進するため、被災者自身が契約し、賃貸代金を公で負担する形により、行政側の手続きを簡素化する(東日本大震災での実績あり)

(2)被災を機に移動困難となった方への対応
★現状と課題★、★提案★ ともに、既出の2(3)に同じ
(3)常総市に暮らすことを誇りに思える官民協働による対応
★現状と課題★

  • 15-20年に一度、洪水などの被害が生じる地域に市の中心機能や人口が集中している
  • この度の水害は鬼怒川堤防決壊により、過去に類をみない浸水域を生み、市のおよそ半分の面積で被害が生じた
  • 市役所も被災したことから、初動の対応に遅れが生じたことも影響し、市への市民からの信頼感は発災前よりも下がっていることが懸念される
  • 上記の状況が続くことが行政機関への不信を招き、ひいては人口流出につながりかねない状況がある
  • シルバーウィークには一日3,000人以上のボランティアが活動するなど、世間の関心が高かったが、その後のボランティア数は著しく低下しており、10月に入ってからのへ実では300-500人程度となっている

★提案★

  • 現在もボランティアやNPOなどが拠点を構えて活動を継続しているため、行政の強みと民間組織の強みを生かし、生活再建についての市民サービスを向上のため、互いの得手不得手を補完し合う
  • NPOやボランティアが得ている情報は可能な限り行政等に開示し、必要な支援が届くよう協力し合う

◆その他
 本提案は決して行政機関を批判するものではなく、民間組織と行政機関が連携することにより、被災された方々の一日も早い復旧・復興と自立を促進し、被災前よりも魅力的な常総市を創成するためのものです。今後とも、手を取り合い、互いを尊重しながら対話を続けていきたく思っております。

以上
コモンズへのオンライン寄付・会員登録はこちら

茨城NPOセンター・コモンズは、組織の壁・心の壁を越えて、人がつながり、ともに行動する社会を目指します。