水害発生から6週間経った、茨城県常総市の状況報告

 泥かきボランティアは、最初に越水していた常総市北部の若宮戸地区のニーズが先週から表面化し、たくさんのボランティアが連日入っています。今、常総市災害ボランティアセンターに寄せられているニーズへの対応だけでも、3,000人分のボランティアが必要とのことですが、まだ足りない状況です。家に入った土砂、田や納屋、側溝の掃除もありますし、各地区の集会所なども手付かずではありますが、片付けに関する活動については先が見えてきた感じです。
 ただ、街は再びゴミが目立つようになっています。家の工事で出た木屑、濡れた断熱材、ブロックなど、なぜか災害ゴミ扱いにならず、産業廃棄物ということで市が回収しないためです。工事業者が運んでくれる場合は良いですが、業者が見つからない中、自力でまたはボランティアの力を借りて、床や壁、床下の断熱材などを剥がした場合、個人が産廃業者に頼まなければならない状況で、皆困っています。
 一方で、外部からたくさん入っていた炊き出しの件数がだいぶ減っています。避難所は市内5ヶ所となりましたが、大きなところは2ヶ所で、全体で300名を切り、ここがいつまで続くか、が一つの焦点になっています。
 遅れていた罹災証明が持ち家の人には届くようになりました。これにより、住宅の応急修理制度や家の修復が難しい人、避難所にいる人などを対象にした住宅の無償提供の申し込みが増えそうですが、いくつか制度に関する問題というか矛盾が表面化しています。
 住宅の応急修理は、持ち家の人が床の張り替えなど応急修理をするのに、業者に567,000円までは払うものですが、周知がうまくいっておらず、市に申請する前に工事業者にお金を払ってしまった場合や、半壊の場合、所得制限に引っかかって対象外になる方の不満が多く聞かれます。被災者生活再建支援金は、借家の人も対象になり、現金が得られるのは良いのですが、家を解体しない限り半壊は対象外です。
 今回の罹災判定では、浸水が床上1メートルを超えるかどうかが、半壊か大規模半壊の区分の一つの目安とされています。全壊50、大規模半壊900、半壊2,800と半壊が多いのに、現状では応急修理も生活再建支援も得られない、見舞金数万円にしかならない・・・。車を複数失い、修理費に何百万円もかかり、1階にあった家財道具はほとんど買い直さないといけない。そういう世帯への救済がなぜこんなに薄いのか。
 これは、これまでの災害でも問題だったそうですが、なんとかしなければなりません。今考えられる救済策は、県や市に半壊世帯への独自の支援の予算を確保してもらうことで、これは前例もあるので、なんとか働きかけたいと思っています。現状を伝え、世論をどうつくれるか、このような制度のままでは、今後水害に遭う人は皆とても辛い思いをするでしょう。
 そのため、たすけあいセンター「JUNTOS」では、半壊住宅で2階での在宅避難をしている人の状況を一軒一軒訪問して伺う活動をしました。130世帯の声をまとめたところ、「風呂が使えない」が30世帯、「自炊環境がない」が90世帯もありました。このような調査を市や社会福祉協議会でも行うようになり、在宅避難者対象の食事提供について、県、市と協議が始まっています。
 特にこうした2階で生活をしている方が多い地区で週1回でも炊き出しを行い、暖かい食事の提供と合わせて、住民同士が話せる場を作っていこうとしています。計画的に炊き出しを実施したいのですが、まだ地元の方は片付けに追われています。決まった日時、場所に、会場設営や配食の応援に来てくれる団体を県内で募っていきます(ご協力いただけるグループの方、月1、2回でも良いですから、たすけあいセンター「JUNTOS」までご連絡ください)。
 私は昨日、娘の中学校で炊き出し(これは毎年やっていること)をしている中で、久しぶりに会った人と話しましたが、心が癒されました。こういう話せる場が、元気の素になると実感しました。 
 
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 先週嬉しかったことは、カーシェアの利用者が2組生まれたこと。最初は避難所の方で、家に片付けに帰る際に協力し合うそうです。2組目はブラジルの方で、買い物や病院に行く際、助け合っていくとのこと。このように車のシェアを通じて、助けあう関係が生まれれば良いと思います。
 住宅の無償提供で入れるところの多くは、つくばの元公務員住宅です。ここでカーシェアの車を置ければ、常総市に通いやすくなるし、団地内でのコミュニティづくりにもつなげたいと動いています。つくばと常総は、隣とはいえ車で30分以上、電車だと時間もお金もかかります。公営住宅にはペットがいると入れないという悩みも多いです。常総市に近い場所で、民間アパートを行政で借り上げるなどして提供しないと、皆家や町に戻れなくなります。人口流出を防ぐためにも、公営住宅以外の民間借り上げをぜひ行うべきです。
 
 住民票を移さず、つくばにバラバラに移ると、つくば市からも常総市からも支援や情報が届かず、孤独に関する問題が増えることが危惧されます。それを防ぐために、たすけあいセンター「JUNTOS」では各地から頂いた日用品や自転車など、引っ越しに合わせてお届けしながら、つながりを作るための活動を始めました。このための物資をどのように集めるか、運ぶ車や人をどのように確保するか、倉庫をどうするか。
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 前述の炊き出しの体制づくりもそうですが、孤立を防ぎ、人をつなぐ活動をするには、多くの人の協力が必要ですし、それをマネージメントする人材も必要です。コモンズでは、JUNTOSプロジェクトの運営スタッフの求人も行っています。まず3月までですが、ともに運営を担ってくださる方を求めます
 
 外国人の方対象の情報提供、移動サービスの車の運転や整備、市内各地で行う炊き出しやサロンの運営への協力、新たな住まいに必要な物資の確保や運搬に関することなど、建築、法律、心の問題などで専門家と被災者をつなぐ事業、これらの事業を続けるための資金づくりなど、たくさんのことを粘り強く続けていくつもりです。ご協力いただける部分で結構です。引き続きご支援ご協力をお願いします。

2015年10月25日(日)
認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ
代表理事 横田 能洋
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