水害発生から3ヶ月経った、茨城県常総市の状況とコモンズの活動報告
代表理事 横田 能洋
昨日で水害発生から3ヶ月が過ぎました。少し間が空きましたが、常総市の状況とコモンズの活動報告です。
※ 前回の報告はこちらをご覧ください(水害発生から8週間経った、茨城県常総市の状況報告)
昨日、隣の相野谷町にラーメンの炊き出しの案内を配りに行きましたが、貸家の多くが床をはがすところまでで工事が止まり、空家状態。持ち家の方も、大工さんの方が住民の方より多いのではないかというくらい、皆どこかに一時避難しているようで、人が居なくなっています。炊き出しの場が、こうした方々の情報提供の機会になればと、一軒一軒仲間とともに歩きました。
つくばなどにアパートを借りて暮らしている方は、毎日子どもを幼稚園や小中学校に送迎しています。部活がある生徒であれば、恐らく家を6時半には出るでしょう。私の子が通った幼稚園も被災し、その園児の親はすごい時間をかけて園に送迎し、さらにそこから園のバスで隣の市の幼稚園に行って過ごしていると聞き、驚きました。そこまでして、子どもたちがバラバラになるのを防ごうとしているのです。
そこで、こうした一時避難先から子どもの送迎をしている保護者の方々の声やニーズを集めるための調査を企画し、これから市内の学校の協力のもと実施します。避難生活をしている人のニーズを見えるようにし、親が送れない時に少しでもたすけあいセンター「JUNTOS」の移動支援でカバーするためです。その体制を作るべく、12月23日にはボランティア送迎に関する講習会を無料で開催します。月1回でも送迎ボランティアをしてくれる方を増やすためです。
先月末で常総市の災害FM放送が終わってしまいました。私たちは4回多言語での情報を流しましたが、市報が届かない、読めない人のためにも音声情報は必要です。先月29日に開催した井戸端会議では、神戸で市民による多言語のラジオ放送をしている吉富さんを迎え、ラジオは住民が自分たちの想いを発し、住民がつながるための道具と教わりました。これから市民リポーターを募り、各地の集まりの様子とか、様々な人の暮らしの状況、想いが伝わる手作りの番組を作り、インターネット・ラジオなどで流せたらと思っています。
アパート経営をしていた方から、アパートを直したくても人が戻るのか、お金をどうすれば良いかわからない、という相談も相次ぎました。そこで、高齢者などが安心して住める共同住宅に改装する方法を考える会議を16日に開きます。仮設や復興住宅がない中で、高齢者の孤立を防ぎ、なおかつ空家の増大を防ぐには、これが一番有効だと思うのですが、改装費をどう捻出するかが一番の課題です。
災害救助法によるみなし仮設住宅、復興住宅は「全壊」が対象とされ、それではほとんどの方が対象外になってしまいます。なんとか半壊の人でも住宅支援が受けられる方法を見出したいです。アパート・オーナーに50万円、半壊世帯に25万円支給されたとしても、それだけでは以前いた場所で住むことは、現状では困難で、ほとんどの人はどこかへ移り、バラバラになり、直せないままの空きアパートだけが残ります。
コモンズが、常総での災害復旧プロジェクトを「juntos」(一緒に)と名付けたのは、人々がバラバラになり、分断されるのを防ぎたかったからです。
もともとこの地域には、旧石下と旧水海道、水海道の町内か外、日本人と外国人、自治会に入っている人とそうでない人など、様々な溝がありました。今回の災害で、被災もなかった地区、一時浸水したけれど日常に戻った地域、未だ家に戻ることもできない地域、自力で家のリフォームができた家、お金がなくて直せそうにない家、浸水が床上1メートルを超えたかどうかなどで、様々な被災の差や支援の差が生まれました。それが住民の間の温度差を生んでいます。
さらに、アパートの人はどこに行ったのかわからず、先月末に閉鎖された避難所から移った方も見えにくくなっています。バラバラでそれぞれのことがわからないと、皆でなんとかしよう、住まい、店、人が戻ってくるようにしよう、街を取り戻そうというエネルギーが出てきません。このままでは、人口流出と空き家になる家やアパートが増え続けます。
少しでも気持ちが一緒になれる方法はないか、それで考えたのが今取り組んでいる「ぬくもりのバトン」プロジェクトです。最初はとにかく風が入り、暖房器具が使えない家は寒いだろうからと、電気カーペットをカンパで買って届けることを企画しましたが、電磁波カットのものは高いことがわかり、電気毛布に変えました。これなら複数あっても、どこでも使えます。
これを配るだけなく、支援する人の気持ちが入った毛布を受け取った人からは、メッセージを寄せてもらうことにしました。3ヶ月間、どこでどう過ごしてこられたか、生活の何が変わり、何に困っているか、今回気づいたことや今後の町や暮らしの再建への想いを、世帯ごとに話し合って書いてもらい、そのメッセージを本にしたり、ラジオで紹介したりしていきます。
それを見聞きした人が、まだそんな大変な生活を続けているのか、そこまでしてなんとか元の生活に戻ろうとしているのか、といったことを常総市の人が共有できれば、常総に戻って元いたところでやり直そうとか、皆でなんとか協力して、人が帰って来やすい状況を作ろう、という空気を作れるのではないかと思っています。そして、一人一人の声が市の復興ビジョンや計画に反映されるようにしていきたいです。
寄付をいただくことで、一つでも多くの世帯に応援の気持ちと暖かい電気毛布を届けることができ、多くの住民の声と想いを集めることができます。コモンズでは、この毛布を購入するための寄付、電気毛布を届けるボランティア、メッセージを入力するボランティアを募っています。併せて、被災で塾に行けなくなったなどサポートが必要な中学生や外国児童生徒対象の学習支援を冬休みから行うのに合わせて、学習支援ボランティアも募っています。
まだまだ、たくさんの課題があり、支援が必要です。近所で家が次々に解体され、店の廃業の話も多く、とてもクリスマス気分にはなれませんが、ボランティアに来てくれたり、色々なご支援が続いていることが、私たちや常総の人たちの心の支えになっています。
少しずつ、住民の方も自主的にサロンやコンサートを開くように動き出していますし、必死に事業再開に取り組んでいる事業主の方もいます。皆が前を向いて進んでいけるように、今後もご支援をお願いします。長文お読みいただき、ありがとうございました。
茨城NPOセンター・コモンズは、組織の壁・心の壁を越えて、人がつながり、ともに行動する社会を目指します。