2015年の年末の、茨城県常総市の状況とコモンズの活動報告
認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ
代表理事 横田 能洋
今年も後少しになりました。今日はボランティアの方の協力で10台の自転車を、第2避難所や自宅にお届けすることができました。「ぬくもりのバトン」プロジェクトに参加いただいた方からのメッセージも50件近くになりました。こうした活動ができるのも、各地でカンパを募っていただいた方々からの寄付のお陰です。本当にたくさんのご支援をいただき、ありがとうございました。
「ボランティア送迎講習会」に避難所で暮らす人が来てくれたり、中学生対象の学習クラブに被災した高校生が参加して下さるなど、常総の皆さんがJUNTOSの助け合い活動の担い手に加わって下さるようになりました。とても嬉しいです。
2015年の後半は常総市の水害対応に奔走した4ヶ月間でした。最初の数日は、水に囲まれ誰もいなくなった町で、被災地の情報を発信し、水が引いた4日後から外国児童の学習支援拠点にあったものや車の処分、そして新たな支援拠点を作る活動を開始。全国から駆けつけてくれた仲間とともにたすけあいセンター「JUNTOS」を立ち上げ、外国人住民にも被災者対象の情報を翻訳して届ける活動や、軽トラックや片付けに必要な機材の貸し出しを始めました。
10月に入り、通学や通院で困っている人への送迎ボランティアやカーシェアリングの普及に着手。行政が避難所の人数に注目していた中で、家に戻って不自由な2階生活をしている在宅避難所の窮状を調べて、市に支援を求めました。全国から訪れた70を超える市民団体と情報共有のための連絡会を毎日開催し、住民のニーズとそれにどのように対応をするかをまとめて、市に提案する活動も行ってきました。週数回、炊き出しやサロンを行い、チラシを配りながら住民の声を聞き、まちの変化を見てきました。
常総市の現状
堤防決壊現場近くの道路も通行止めが解除され、飲食店も再開するところが増え、一見以前に近づいたように見えますが、数日間水に浸かっていた事務所周辺の住宅地を歩くと、家の解体が目立ちます。高齢世帯のお宅で、ボランティアも協力して1階の家財を全て取り出し、懸命に掃除してきた家の方も、「本当はここにいたいけれど、諦めて子どものところへ行く」と話していました。
アパートも床上げしただけで工事が止まっている物件が多く、住んでいた人も戻って来られません。私たちが新たな学習支援拠点にすべく借りることになった家の修理の見積は500万円を超えました。半壊でもこれくらいかかるということです。空家だったということで何の支援もないのですが、これを大工ボランティアの手で直し、地域の方が集える場所にしようとしています。
このようにお金の関係で家を直せない人、水が怖いので戻りたくないという外国の人が町を去っていきます。なんとか家を直せた人も多額の借金を背負い、中には雨が降ると怖いという人もいます。個人事業主で廃業するか悩んでいる人もいます。義援金や支援金を足して50万円がもらえたとしても、それだけでこの地でやり直そうとは思えない人が多くいます。
床上浸水世帯が多過ぎて、経済的支援が薄いことが深刻な状況を生んでいるのですが、その辛さをわかってもらえない、という感覚(「顔で笑って、心で泣く」とある方は書かれていました)で気が晴れない人が多くいると思います。一人ではないと思えること、心の支えが必要です。
コモンズのチャレンジ
人口流出と空き家増大に加え、一時避難で住民がバラバラになっています。さらに被害状況の違いが支援の格差を生み、なんとなく話しにくいなど、気持ちの上でも住民間で分断が広がっています。
これを防ぎ「一緒に暮らしと街を再生する」ため、たすけあいセンター「JUNTOS」では寄付で購入した電気毛布や自転車を届けながら、世帯ごとにメッセージを書いてもらい住民の状況や想いが周りに見えるよう発信したり、空き家を改装して住民が集える場づくりをしています。
他県からのボランティアの多くが撤退する中で、送迎、サロン運営、家の片付けや修理、物資のお届け、子どもの学習支援など、県内のボランティアと住民が共に活動する場と参加の機会を増やそうと取り組んでいます。こうした活動をなんとか続けていきますので、引き続きご支援くださいますようお願いいたします。
茨城NPOセンター・コモンズは、組織の壁・心の壁を越えて、人がつながり、ともに行動する社会を目指します。