【訃報】初代代表理事帶刀治先生の逝去に関するお知らせ

コモンズ関係者の皆さま

2020年1月3日
認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ
代表理事 横田 能洋

新たな年の始まりですが、残念なお知らせをしなければなりません。コモンズの初代代表理事として、草創期のコモンズを牽引してくださった帶刀 治(たてわき いさお)先生がお亡くなりになりました。1月2日、自宅で吐血後に、搬送先の病院で息を引き取られたそうです。
帶刀 治先生のご冥福をお祈りするとともに、コモンズ並びに茨城のNPOのために力を尽くしていただいたことに、心から感謝したいと思います。
通夜及び告別式は、下記のとおり執り行われます。
通 夜 2020年1月7日(火)午後6時から
告別式 2020年1月8日(水)午後1時から
場 所 (通夜及び告別式とも)水戸市斎場(水戸市堀町2106-2)
喪 主 ご長男 帶刀 厚(こう)氏

帶刀先生と横田、そしてコモンズの関わりについて

(長文で恐縮ですが、よろしければお読みください)
私、横田と帶刀先生との出会いは、1986年の茨城大学での地域社会論の講義でした。
当初福祉系のゼミを考えていましたが、先生の熱い授業に触れ、帶刀ゼミを志望しました。地域社会とは、家族から地球全体まで、人が構成する世界であれば何でも研究対象になると言われ、基地問題、原子力、ジェンダーなど、ゼミ生は様々なテーマに挑みました。
私は障がい者問題をテーマに卒論を書こうとしましたが、書けず留年して、教育社会学をベースに高度成長期に特別支援学校に障がい児が分離されていく過程をまとめました。先生からは、「法に照らしてこうあるべきとは言うな」、「なぜこのような現象が生じるのか、社会的現実の背景にある構造を解く」、「人々に選択肢を示す」のが社会学と教わりました。
分離教育では、子どもが共に育つ機会が得られません。私の母と聴覚障がいの弟が選択した普通小学校への就学、つまり「統合教育」は、何の配慮もない中で学ぶことで多くの困難を伴いましたが、聾学校では得られなかったことも得られました。
私は、統合教育(分離せずに混ぜること)は相互に変化を生む「共感的実践」であり、効率化や分断化が進む社会で、共感的実践が人間らしさを取り戻す可能性を持つと結論づけました。共感的実践を具体化する手段がボランティアやNPOであり、いかに分断を防ぎ、他者と共生できる社会をつくるかが、私のライフテーマになりました。そのように社会学を通じて教えてくださったのが帶刀先生でした。
1991年の春、先生の紹介で茨城県経営者協会に就職することができました。この年は企業の社会貢献元年と呼ばれた年で、協会でも社会貢献に関する研究会が置かれ、帶刀先生は座長をしておられました。
私は、学生時代、障がい者関係の様々なボランティア活動に関わっていたこともあり、行政ではなく、民間企業だから生み出せる障がい者福祉があるのではと考え、障がい者雇用、誰もが使える商品・サービスなど、企業の皆さんと検討する仕事に恵まれました。
アメリカの企業の社会貢献について調べていくと、NPOという存在を知りました。市民団体が寄付や民間資金を集めスタッフを雇用し、専門性を持って企業に事業を提案し、協働で社会貢献をしていることがわかりました。
そのようなアメリカの状況を帶刀先生に報告しながら、1996年に茨城NPO研究会を立ち上げ、NPO法が実現した後、帶刀先生が活躍された茨城大学の地域総合研究所の一室で、1998年にコモンズは設立総会を行いました。帶刀先生には代表を引き受けていただき、私は茨城県経営者協会を退職して、コモンズ専従職員となりました。
前例がない事業を始めたので、とにかく出会った地域課題(高齢者や障がい者などの外出支援、地域福祉、若者のひきこもり、災害、外国人との共生など)を素材に、何ができるか考え、チャレンジを重ねてきました。リスクを厭わず私が前に進むことができたのは、帶刀先生、そしてその後を引き継いでくださった斎藤義則先生が、ずっと背中を支えてくださったからです。
帶刀先生は、大学の中でも外でも、NPOについて多くの人に伝え続けてくださいました。若い頃、先生とタイや韓国にも一緒に旅をしました。先生は、陰ながら地域に暮らす外国籍の方々のサポートもしておられました。
常に弱い立場に置かれた人を心に留めつつ、社会全体でどうすれば課題を克服できるか、幅広いセクターの方との討議と連帯を進めるという、先生から教わった道を歩いてきました。帶刀先生の教えなくして、私の生き方、コモンズの事業はありえません。
いつの日か、「ここまで来ました」と先生に報告させていただきたかったのですが、それはもう叶いません。もう声を聴けないと思うと、本当に哀しいです。
帶刀先生、私は先生と共に開拓してきた茨城のNPOという大地が、より豊かなものとなるように、様々な仲間と共に今後も取り組んでいこうと思います。
32年間ご指導いただき、本当にありがとうございました。

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