水害発生から5週間経った、茨城県常総市の状況報告
代表理事 横田 能洋
水害から5週間が過ぎました。今の常総の状況です。
水害発生直後は、鬼怒川の東側はかなりが水に浸かったわけですが、いつまで水に浸かっていたかと、堤防決壊現場との距離で状況が分かれています。2日くらいで水が引いたところで床上まで行かなかったところは、衣食住に関しては通常の生活に戻りつつあります。森下町も東側は4日くらい水に浸かっていたので、床を張り替えたり、壁も内側の断熱材が濡れている場合は、壁を数十センチ剥がすことになります。今、近所を回ると、床がなく、壁を剥がした家が多くあります。ここで困っているのは、注文が殺到して大工さんがなかなか来てもらえないこと。また剥がした床や壁、断熱材は産業廃棄物扱いとされ、市が回収してくれないこと。せっかくきれいにした庭や駐車場に、建築廃材と呼ばれるものが積まれています。決壊現場に近いところは、家が傾いていたり、土砂を取り除くのにまだまだ時間がかかりそうで、家に戻るのは困難な状況です。
さて、たすけあいセンター「Juntos」には連日たくさんの仲間が来ています。毎晩19時から開かれる常総市水害対応NPO連絡会議では、民家や農地の片付けに行っている片付けグループ、避難所を回っているグループ、市外から来られた炊き出しやマッサージなどのボランティアを調整するグループ、移動支援グループ、行政制度に関して働きかけているグループから報告があり、共有しています。先日は連絡会として市に具体的な提案を出し、それが一つ一つ動き出しています。
片付けグループは、以前は家から使えないものを出したり、市街地の道路に出ている災害ゴミの片付け対応が中心でしたが、市の集積所への持ち込みも2日前に終わり、今後は粗大ごみは市の回収を待つことになります。家の工事で出た廃材の持って行き場がなく、個人が産業廃棄物業者に頼むといっても、現実には難しいです。農家の納屋の片付け、事業者の倉庫の片付け、側溝の泥や藁の袋詰め、重機を使って流されたブロックなどを取り除く作業などが行われています。ここにはまだたくさんのボランティアが必要です。
避難所は、石下の総合体育館とあすなろの里の2つに集約されつつあり、昨日、ようやく、ようやく、おにぎりから弁当に変わったとのこと。NPOの働きかけで、身体の弱い方対象のスペースが確保され、布団も用意されるようになりました。看護師が夜いない、少数の保健師で200名近い避難者を見きれないなど、医療福祉系の人材が不足しています。環境が徐々に改善されたと言っても、避難所生活に疲れた人の中には、県が用意した公営住宅に移る人も出てきています。プライバシーが確保できることは良いのですが、離れた地域に行って孤立しないか心配です。支援が必要な方については、引っ越す前にNPO関係者が関係をつくれるようにしようとしています。引っ越すと子どもの通学距離が長くなります。通学用に自転車を届けるなどしていますが、数が足りません。
Juntos自体は、情報誌の発行(15号まで来ました)、他言語でのラジオ音源作成(3回目まで)、移動サービスの立ち上げなどに取り組んでいます。移動サービスは、通学・通院支援を中心に、昨日は28回の利用がありました。市のデマンド交通(乗り合いタクシー)は再開しましたが、市内限定で子どもや要介護者の利用が難しい面もあるため、それが対応できない移動ニーズに応えていきます。運転協力者の確保が急務です。2、3人のグループで車を共有するカーシェアリングも既に車はあり、利用したい人対象の説明会を行います。
在宅避難者の実態とニーズを明らかにするため、水海道森下町の床上浸水地区の訪問調査も行い、約100世帯の声を聞きました。風呂に入れない世帯が30、台所を使えない世帯が80もありました。そんな状況で、ほとんどの世帯が夜も過ごしています。避難所統合で家に通うのが遠くなったこと、空き巣が心配なことなど、理由はいろいろですが、はっきりしているのは、在宅での暮らしも避難所と同じように大変だということです。こうしたデータを市や県に示し、在宅避難者対象の定期的な炊き出しを市と協働で行うことになり、これからその準備です。炊き出しは、暖かい食事の提供と合わせて、家にこもりがちな人が集まって話をしたり、相談できる場にもしていきたいと思いますが、つくる人やつくる場の確保が課題です。ほとんどの公共施設が使えず、地元の人も自分の家以外のことに力を割ける人が限られています。協力いただける方を募っていきたいと思います。
罹災証明もやっと届くようになりました。被災者生活再建支援金は、大規模半壊以上(目安は床上1メートル)にしか出ないので、1メートル未満でも被害が大きいことを示し、何らかの救済が受けられるよう働きかけることが大きなテーマです。一次判定に不満な方が二次判定を受ける際など、特に外国人被災者の支援をしようと思います。市は昨日の市議会で半壊世帯への支援を打ち出しましたが、県にも半壊の世帯への独自支援実施を働きかけていきたいと思います。また床下だった人でも車を失った人は多くいます。コモンズもそうですが、事務所が損害を受けても、被災証明が受けられるだけ。何の支援もありません。
元々常総事務所で行っていた外国の子どもたち対象の学習支援も再開したいです。ただ今回の災害で学習用具や学習スペースを失ったり、家計が苦しくなった世帯が相当あると思います。国籍に関係なく、塾にも行けなくなったとか、学習環境が整わない子ども対象の学習支援もやっていかなければと思っています。学習支援にご協力いただける方も募りたいです。
このように、まだまだやることがたくさんあります。1日に3つくらい会議がある日もありますが、各地の支援センターの方や地元の主婦の方など、代わる代わる事務所に詰めてくださることで、なんとかJuntosは動いています。本当にありがたいです。支援物資を在宅避難者の世帯に届ける際の袋詰めとか、情報誌の配布とか、いろいろな活動があります。1日でも手伝いに来ていただけると、とても助かります。
最後になりましたが、呼びかけに応じてたくさんの寄付や物資、貴重な情報を頂いています。本当にありがとうございます。これらを役立てて、引き続き頑張りますので、今後もご支援よろしくお願いします。
茨城NPOセンター・コモンズは、組織の壁・心の壁を越えて、人がつながり、ともに行動する社会を目指します。